Interview

ものこい対談 Vol. 3

2022年10月

青山トキオ Painter

ほろ酔いの高畑と、ものこいメンバーが語り合うこのコーナー。
今回は、酒場を飛び出してアルバムのアートワークを担当した青山トキオの秋田県
十和田のアトリエを高畑が訪問。制作秘話を語り合います。

青山トキオのルーツ①

高畑

今回は、青山トキオ君のアトリエにお邪魔しております。平屋の一軒家で、広くて抜けもいい。仕事がしやすそうな環境ですね。

青山

そうですね。冬は寒いですけど、仕事には集中できますね。

高畑

冬は大変だよね。十和田湖の近くなんですけど、この地域は冬になると雪の量も大変になるから逃げだしたくなる時もあるでしょ?

青山

そうですね、寒さはもちろん除雪も大変です。

高畑

これだけ広いと屋根の雪下ろしも大変だよね。

青山

軒下の雪寄せが一番大変ですね。屋根から落ちてきた雪を放っておくと固まってしまうんで、尚更あとで大変になるんですよ。

高畑

あれ、絶望的な気持ちになるよね。そんな苦労もありながら十和田でアーティスト活動をしている青山トキオくんなのですが、そもそも今回このオファーが来たときどんな印象だったんですか?

青山

正直、音楽的にやったことのないジャンルだったので『できるかな?』って気持ちはあったのですが、逆に面白いことができそうだったんで『すぐにやります』って返事をしました。

高畑

いつもは、ファンキーなジャンルが多いですよね。

青山

そうですね、ヒップホップとかブラックミュージックが多かったので、音源を聴いたとき懐かしい感じがして、やったことないけど面白そうだな~って思いました。

高畑

そうなんですよ。自然と懐かしさが滲み出たアルバムになってますね(笑)アトリエも平屋一軒建てで、まさしく昭和の懐かしい感じがするのだけどトキオ君も年齢のわりに昭和とか懐かしさを感じるものが好きなんですか?

青山

そうですね。僕も81年生まれなので、昭和大好きで古い音楽も好んで聴いていました。

高畑

以前、オンラインでミーティングした時も60~70年代の音楽も聴いていて、そこから影響を受けたって言ってたよね。どんなアーティストを聴いていたの?

青山

サンタナとかジミヘンを聴いていましたね。それから、ジミヘンがきっかけでファンカデリックとかブラックミュージックを聴くようになりましたね。

高畑

もろに、これまでの制作ジャケットの雰囲気に出てるね。

青山

そうですね。当時は音楽もそうですけどジャケットのインパクトが一番衝撃的で、ジャケットが良くないとレコードが買えないって感じでした。

高畑

年齢的に若いのにそのあたりの音楽が好きなのは、誰かの影響があったの?

青山

親父の影響でオールディーズから入ったんですが、いろいろ聴いていくうちに自分はブラックミュージックが好きなんだって気がついた感じですね。

高畑

そういうエモーショナルでプリミティブな感じがトキオくんの絵から感じられるのはそういうルーツがあるんだね。

青山トキオのルーツ②アメリカ

高畑

以前のミーティングで少し話していたけど、しばらくアメリカに行っていたのは、何がきっかけだったの?

青山

音楽とか映画とかアメリカの文化が好きだったので、単純に憧れで住んでみたいっていうのはあったんですけど、そもそものきっかけは小学5年生の時に2週間だけ行った留学でした。2週間なんで丁度いい感じにアメリカのカルチャーに洗脳されましたね(笑)

高畑

衝撃的な経験だったろうね。どの辺りに行ったの?

青山

カリフォルニアの田舎の方でした。行く前から映画で見て知っているつもりになっていたんですけど、実際に行ってみると、映画の世界に自分がいるみたいで感動しました。

高畑

その当時としては大冒険だよね。

青山

その後、高校を卒業してからポートランドで語学の勉強をして、シアトルに移ってアートの勉強を始めました。

高畑

そうだったんだね。シアトルでアーティスト活動を始めた時、現地の人たちからの反応はどんな感じだったの?

青山

音楽が好きだっていうのが伝わってくるっていうのはよく言われました。あと、シアトルいた時に一軒家で9人のシェアハウスをしていたんですけど、そこのオーナーがやばいやつで…。アジア人の僕に差別用語をガンガンつかって来るような奴だったんですよ…。でも、ある日廊下に置いてある僕の絵を見てから態度がガラッと変わったんですよ。最終的には家賃はいらないから絵をくれって言われることもありました。

高畑

面白いね~。アメリカらしいよね。
やっぱり日本と少し違っていて、アート作品を見て認めるのが早いっていうのは面白いね。

帰国後の活動について

高畑

改めて日本に戻ってきての仕事について聞きたいのですが、色々な音楽ジャンルから依頼があるという事についてはどう思っているんですか?

青山

やっぱり光栄ですね。それがやりたくて絵を描きたいと思ったので。

高畑

まず音を聞いてから描くとのことだったのですが、いつもそのようなスタイルなんですか?

青山

そうですね、そのアーティストを知るためにまず音を聞いています。僕のスタイルを知っていてくれる人は任せてくれることも多いです。要望がある方でも自分のスタイルを尊重してくれることが多いので、相手を理解したうえで自由に描いていることが多いです。

高畑

海外からの話も多いですよね?

青山

7割くらいがそうですね。

高畑

どこから見つけて連絡して来るんだろうね?

青山

ジャケットを手に取ってもらう事はもちろんですが、インスタなどから知ってくれる方も多いです。

高畑

時代だね~(笑)

青山

そうですね。海外のやり取りもほとんどがインスタやフェイスブックを使っています。

高畑

(SMSなど)そういう意味でも海外との仕事がやりやすくなっているんだね。日本に戻ってきて、地元という事もあるとは思うのだけど十和田で活動していることには何か理由があるの?

青山

正直、違うところに住みたいっていうのはあります。今でもここでのインプットは限界があるので…コロナの影響もありますが、海外に行きたいですね。

高畑

そもそも、いろんな国に行っていたんだよね?

青山

コロンビアには4か月くらい行っていました。その他にも、ロンドン、タイとかいろいろですね。

高畑

海外に出ると、どういったところでインプットを受けるの?

青山

そうですね。国ごとに生活と音楽の結びつきが違うと思うので現地で感じることが刺激になりますね。そういう意味で日本はまだ、音楽と生活の結びつきが弱いように感じます。

高畑

ちょっと世界に遅れている部分はあるのかもしれないね。

青山

音楽に限らずアートもそうだと思います。普通の家でも有名とか無名に関わらず自分の好きな絵とかを飾ったりしているんですよね。音楽も、例えばコロンビアやジャマイカでは、朝から近所の家から流れてくる音楽が街に溢れていたりするんですよね。日本では、音楽はライブで。絵は美術館で。みたいな距離感を感じるんですよね。

高畑

海外は、より日常に馴染んでいるんだね。

マイノリティーであることの重要性

高畑

創作活動において『旅』というのがキーポイントになるのかな?

青山

もちろん重要だと思います。でも、僕が大切にしているのは『マイノリティーである』という事です。

高畑

それはどういうことなの?

青山

例えば海外では、日本にいるときのようなコミュニティはないので自分と向き合うことができる。その他にも言語でカバーしきれない部分はその他のコミュニケーションで頑張るとか、そういう部分がエネルギーになっています。だから「十和田を出ないとなぁ」とは思います。

高畑

でもここがアイデンティティなんだろうね。

青山

そうですね。好きとか嫌いとかを超えて特別な場所ではありますね。やっぱり生まれ育った場所なので。

高畑

なるほどねぇ。そうなると近々海外に行くことになるのかな?

青山

まずは、一か月くらいタイに行こうと思っています。

高畑

他にも色々あるのにどうしてタイなの?

青山

単純に物価が安いということはあるのですが…(笑)それこそ日本の昭和のような懐かしさを感じられるし、アートも盛んなユニークな国なので行ってみたいです。

高畑

仏教の壁画とか伝統的なアートもエネルギッシュだしね。とはいえ、マイノリティなところに行くという事を聞けて良かったです。みんなと一緒なのはつまらないからね。

青山

そうですね。そもそもそういうのが苦手で(笑)

高畑

これからも世界中で活躍されると思いますので楽しみにしています。改めて、今日はありがとうございました。

青山

ありがとうございました。

高畑和久とmonokoi
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