Interview

ものこい対談 Vol. 1

2022年9月

箭内健一 Produce

今宵も酒場で、ほろ酔いの高畑とものこいメンバーが制作秘話を語り合う。
今回は、いつも通りホッピーを片手にプロデューサー務めた箭内健一との対談の様子をお届けします。

ものこい誕生のきっかけ
~高畑のキャラクターが見える音楽を~

高畑

今回ありがとうございました。

箭内

ありがとうございます!

高畑

去年(2021年)4月にこの店で飲みながら話したことが、ちょうど1年半後に形になりましたね。あっという間だったけど、非常に楽しい時間になりました。

箭内

そういえば、ここで飲んでるときに高畑さんが突然これからのキャリアの話を始めたんですよね。最初、何を言ってるのかわからなかったんですけど…。
要するに『CD出したい』って話だったんですよね(笑)

高畑

だいぶぼかしながら話してたからね(笑)要するに健一くんとやりたいってことだったんだよ。

箭内

だいぶモゴモゴ話してましたね(笑)

高畑

やってくれるかなー、おこがましいかなーって気持ちがあったんだよ~。

箭内

いやいやいや!そんなことはないですよ。

高畑

でも相談したら、最初はコピーバンドみたいなものをイメージしてたのに『絶対だめです!絶対オリジナルですよ!』っていってくれて嬉しかったんだよね。

箭内

絶対だめですよ。そんな日曜日の夜にやってるドラマの親父バンドみたいなのは絶対嫌でした!高畑さんなら絶対できるから本気でやりたかったです。

高畑

それも悪くはないけどね。

箭内

誤解してほしくないのは、カバーがダメって言ってるわけではないんですよ。
各アーティストそれぞれに目的があって、魅力の出し方や表現方法が違うから時と場合によるってことですよね。

高畑

カバー曲も素晴らしい作品、沢山あるしね。

箭内

そうなんですよ。だけど今回はちがうなって。
今回は高畑さんのキャラクターを押し出した作品を作りたかったんですよね。それにオリジナルは、創った人が一番上手いんですからね!

高畑

そういうことですよみなさん!

箭内

上手いとか下手とか正解がないのが音楽だから、そういうものに挑戦したかったんですよね。

作詞について
~詞先で創る音楽への挑戦~

高畑

今回、詞を書かせていただいたわけですけど、
健一君から『詞先でいきましょう』っていわれて、逆にあれで火が付いたんだよね。

箭内

結果、詞先でよかったですよね。本当は詞先のほうが難しいと思うんですけど、その分自由に表現してもらえるんで。
真剣に考えてくれたし、何より初めてとは思えないほど譜割りができてたのは驚きました。

高畑

それはすごい意識した。結局曲を書いてもらうための詞になるからね。

箭内

ちゃんと作詞になってましたよ。それに、ものすごい量送られてきたし(笑)
結局ぜんぶ良かったです。

高畑

ほぼほぼ、そのまま曲になったのは嬉しかったね。

野球が勝った夜
作詞について

~アマチュア野球へのアンセム~

高畑

最初に何本か出来上がった詞をおくったら、OKです!ってすぐ電話をくれたんだよね。その時も今みたいに全然関係ない野球の話をしてたら、『野球をテーマでもう1本行きましょう!』って言ってくれたよね。箭内健一はやっぱりプロデューサーとしておもしろいって思ったよ。

箭内

アルバムにもっと日常のなんでもないことを取り入れたかったんですよね。
詞を改めてみた時に、高畑さんのなんてことない事や日常で感じたことが欲しいなぁって思ったんですよ。
それで例えば野球はどうですかってことになったんです。たまたまテレビついてただけなんですけど…(笑)

高畑

そうだよね、でも健一君の息子さんが少年野球やってる話とか、健一君がコーチをしてるって話も聞いていたし、自分も好きだしやっぱり我々の世代と言ったら野球だよなって妙に納得したんだよね。

箭内

実は、ちゃんと歌詞を見てもらうとわかるけど、学童野球のアンセムになってるんですよね。特に2番の歌詞は、息子が野球してる人が聞いたら泣くんだよなぁ…。

高畑

それは嬉しいね。

箭内

僕は息子がいるからかもしれないですけど、歌詞の中のあの距離感に学童野球を感じちゃうんだよなぁ。空き地でやっていることと試合がリンクするあの感じは中学生になっちゃうとなくなっちゃうし。なにより一緒にキャッチボールできるのも小学校のうちだけだろうし。それで試合に勝ったら親父は酒をのむ!そんな雰囲気にぴったりの曲なんですよね。そういう視点でも聴いてほしいなぁ。あんな曲他にないから。

高畑

嬉しいね。でも他にないような曲を作りたかったから、そういう意味では健一君の言ってた日常を切り取ることってことで、他にはない哀愁だったり懐かしさみたいなものがうまく表現できたのかもね。

箭内

他の収録曲は高畑さんの生きてきたブルースの要素が強いけど、『野球が勝った夜』に関しては、日常的でお茶の間的というか昭和的というか懐かしい感じにまとまりましたね。

アルバム制作を終えて
~プロとして戦ってきたそれぞれの強み~

高畑

改めて、今後もいろいろ創りたいけれど、終わってみて健一君の感想はどんな感じ?

箭内

今回やらせていただいて、高畑さんがどんどんうまくなっていったし、歌詞も良くなっていった。おこがましいですが、すごい努力をしていただいたと思います。何よりどんなことを言っても絶対文句を言わない!それはすごいなぁと思いました。僕だったら絶対言いたくなる。

高畑

文句を言いたい気持ちは、本当にカケラもなかったんだよね。ただただ楽しかった。

箭内

僕がなんかこれ違うんだよなぁ。みたいな言い方をしても『そう?もう一回やろうか?』って笑顔で言ってくれたのは救われました。でもそこは、完全にプロデューサーとシンガーという関係性。先輩とか関係なくいかせていただきました!

高畑

いえいえ。そしてホントにプロのミュージシャンはすごかった。デモを聴くたびに、ここはこういう風に表現するんだって、ここはこういう意図だからこんな弾き方をするんだぁって感動の連続だったんだよね。

箭内

まぁプロだから当たり前なんだけどね(笑)

高畑

でも演奏はホントにすごかったね。本番の集中力とか、ちょっとした違いの表現とか、すごく勉強になった。聴いてるだけでも楽しかったくらいだよ。

箭内

だから言ったじゃないですか!ちゃんとメンバー集める!って(笑)

高畑

でもあの時も酔っぱらってたから不安だったけどね(笑)凄腕を集めていただいてありがとうございます!

箭内

ただ、ちょっとごちゃごちゃもありましたけどね(笑)

高畑

どっちのテイクがいい問題はあったよね(笑)

箭内

飛夢くんともちょっとぶつかったし(笑)ああいう意見を言い合うのは、あって当たり前なんですよね。やっぱり何にも言えなくなっちゃうのは良くない。

高畑

でもあの飛夢くんの『インタールード』の時はすごかったね。全部耳コピ!

箭内

出囃子の奴ですよね。僕がその場で出囃子をきかせて、『今ギターで引き直せっ!』って言ったやつですよね(笑)

高畑

無理難題じゃん!って思ったけど、やっちゃうんだからすごいよね。

箭内

僕はできると思ってました!(笑)でも、できたのに対してこれは違うとか言っても、彼は人格者だから『じゃあこの感じはどうっすか』ってすぐやり直してくれるんだなぁ。
『インタールード』も最高の仕上がりですよね。

高畑

そもそも『インタールード』入れるっていうのも健一君のアイディアでさ、あれがあるおかげで普通とは違うアルバムになったね。

箭内

高畑さんを知ってる人はコレコレ!ってなりますよね。

高畑

昔の自分を知ってる人は、これだっ!っていうね。ミュージャンじゃないからこそおもしろいのかもね。

箭内

僕は、実際に体感してますからね。だから『やらないなんておかしい!』と思っちゃうんですよ。高畑さんのルーツですからね。

高畑

確かに、どちらも音という事では共通してるからね。

箭内

MCって意味でもラッパーのMCのようなもので、実際に声で商売してて、かっこよかった姿を知ってるから是非とも入れたかったんですよね。

高畑

レコーディングの歌入りは何回もやってるのに、あのMCだけ1発だったね(笑)

箭内

それもすごいのは、1分半でって言ったらピッタリで終わったんですよ。
あれはさすがですよ。できるだろうとわかってはいたものの驚きましたね。

高畑

みんなも『おぉ~!』ってなってたね。内容は決めてたものの改めて20年近く離れててもできるもんなんだって自分でも発見だったよ。

箭内

やっぱりあの時鍛錬して実践してきたものは10年20年たっても残り続けますよね。

高畑

まぁミュージシャンがいつでもコードを弾けるのと似てるのかもね。

箭内

ちゃんと最初から照れないでやってくれたのも、すごくやりやすかったです。MCはともかく歌も照れずにやっていただいて、すごいなと思いました。

今回のプロジェクトへの想い
~同世代が一歩踏み出すきっかけに~

高畑

今回のプロジェクトは、ある種自分が実験台で、自分がやることが最終目的ではないんだよね。こういうことを本当は、やりたいと思ってるおじさん、おばさんが何千人もいると思うんだ。歌うだけじゃなくて、楽器ができて、詞を書ける人がたくさんいると思う。そういう人たちに『じぶんだってこういうことできるよ!』って思ってもらいたいんだよね。
『文句言ってないで、つべこべ言ってないでやりゃいいじゃん!』って本気で思ってるから一歩踏み出すきっかけになってもらえたら嬉しいんだよね。

箭内

今、サブスクを使えばリリースできますしね。

高畑

やりやすい時代だからね。

箭内

バズっちゃうかもしれない!

高畑

そうそう!SNSも若者だけの文化じゃないと思う。多少時間は取られるけど挑戦したらいいと思う。

箭内

青春を取り戻すじゃないけど、まだまだできるから挑戦してほしいですね。

高畑

釣りでも、車でもなんでもいいのだけど、今回は音楽でこういうことができるっていう提案がしたかったんだよね。

箭内

意外とコストもかからないですしね。ある一定の人たちだけに届けるっていう方向もすごくいいと思うんですよ。

高畑

いいと思う!千人未満とかでも全然いいと思う。

箭内

僕も今回は、大きい事というよりも、高畑さんがこれまで関わってきた人達が『これだよね』って思ってくれるような作品になったら嬉しいです。11歳になる息子によく言うんですけど、誰にでも好かれようと思っちゃだめだと思うんですよね。

高畑

それが、いわゆる本来のカウンターカルチャーというかサブカルチャーだと思ってて、そこから何か生まれてくるんじゃないのっていう余韻も残したいよね。

箭内

その先はまだわからないですけどね。

高畑

その先にあるのはきっと産業なんだろうけどね。今回、少しだけビジネスをしようという側面もあるし、そうしないと広まらないという葛藤はあるけれど、決して大きなお金を得ようって感じではないんだよね。一番は、やっぱり同世代が一歩踏み出すきっかけになってほしいってことなんだよ。

箭内

それが大事ですね。

高畑

でも今回は、一緒にできて、ただただ楽しかった。本当にありがとう。

箭内

こちらこそありがとうございます。楽しそうとか仲良さそうってキーワードだと思うんですけど、今回のメンバーは本当にみんないいやつ。だからこそ楽しかったですね。

高畑和久とmonokoi
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